『老兵は死なず』(1943) [映画・DVD系]
『老兵は死なず』、といっても野中広務元議員の回顧録ではない。第二次大戦さなかの1943年、英国で製作された戦意高揚映画だ(戦意高揚というのはやや語弊があるかな)。
かのマッカーサー元帥が退任時に「老兵は死なずただ消え去るのみ」と述べたことは有名だが、あの言葉が何に由来しているのか気になっていた。そこでたまたまこの映画のタイトルを知り、もしやと思って観てみたという次第。まあ結論から言えば、wikiでマッカーサーを調べるとすぐに出てくるのだが、あの言葉の由来は別にこの映画ではなく、かつての流行歌のフレーズを引用していたようだ(その流行歌と、この映画が関係あるのかについてはわかりません)。
さて、映画について。
冒頭、威勢の良い若い軍人が部下を集め出す。軍事演習の開始が夜中0時の予定なのに、「そんなの関係ねぇー」とばかりに昼間から行動開始。向かった先は市内の湯治場クラブ(日本でいうサウナですね)。そこで汗を流していた老人の身柄を拘束してしまう。老人は抗議するが若い軍人は聞く耳を持たず「ハゲデブヒゲ」の老人をののしる始末。取っ組み合いになってプールへ落ちる二人。ここから、このハゲデブヒゲ老人の若き日の活躍が描かれていく。
主人公とヒロイン女性(デボラカーが一人三役)、当初は敵ながら後に友人となるドイツ人将校が主な登場人物。このドイツ人将校は反ナチでイギリスに亡命してくる人物なのだが、上映時には(いくら反ナチとはいえ)敵方の将校がひとかどの人物として描かれているということで批判が強かったらしい。それから、『老兵は死なず』という邦題になっているが、原題は The Life and Death of Colonel Blimp であり、もともとColonel Blimpという漫画キャラクターからきている。Colonel Blimp は辞書によると、「頭の固い保守」とか「頑固爺さん」的なニュアンスというか慣用句のようになっているようだ。
なお、明確な戦闘シーン等はなく、軍オタが興味を引くような兵器も登場しません。ほぼ3時間くらいあって、ちょっと退屈かも。
平和宇宙戦艦!! [アヤシイ系]
『八甲田山』(1977) [映画・DVD系]
『八甲田山』を見た。時は日露戦争の頃、陸軍では訓練のため雪中行軍をすることが決まり、第五連隊と三十一連隊が選ばれる。第五連隊の指揮官は神田大尉(北大路欣也)、三十一連隊では徳島大尉(高倉健)。第五連隊は連隊長(三國連太郎)まで含め2百数十人という大所帯なのに対し、三十一連隊は少数精鋭の27人。対照的なのは人数だけでなく、行軍のあり方もだ。前者は案内人などいらぬと強気で臨み、後者は案内人を雇って慎重に進む。果たしてその運命やいかに。
それにしても加藤嘉は田舎の村長的な役にぴったりだなあ。遭難寸前の北大路の「天は我々を見放した」というセリフが有名だそうだが、出発時の加藤の「山の神様・・・」というセリフが実は重要な意味を持っている。もともとの本作のねらいは、自然を人間が征服できるのかという疑問から始まったらしいが、実際には組織のあり方のほうに関心が寄せられてしまったことに脚本の橋本忍も意外さを隠せなかったらしい。結果として行軍に成功するのは指揮命令系統のはっきりした組織、失敗するのはそうでない組織であるから、そのような関心の持たれ方も当然といえば当然なのかもしれない。
170分はちょっと長いが、尋常ならざる寒さの中で次第に行方を見誤っていく第五連隊の運命を見ているこちらはなんだか熱くなってくるから不思議。
積ん読その14 『逆転ーアメリカ支配下・沖縄の陪審裁判ー』 [読書不可侵条約系]
本土復帰前の沖縄でのある裁判を舞台にした法廷ノンフィクション小説、もしくは小説風ノンフィクション。訴訟記録が完全ではないため一部創作も含まれているが、実話である(初出は1978年)。第9回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞している(初版では全て実名表記だが、被告人のうち1人がプライバシー侵害で訴えたため、現在では当該人物に仮名が使われている)。
1964年のある夜、事件は起きた。2人の米兵が殺傷され、容疑者として4人の沖縄青年が逮捕された。米軍と取引する貿易会社社長の伊礼仁(主人公=筆者)は裁判所から1通の召喚状を受け取る。陪審員に選ばれた彼は、裁判での証人や証拠、供述調書の不可解な謎や矛盾を通して、被告人である4人が有罪であるとの検察側の主張に疑問を持つ。しかし、当時の米軍統治下の沖縄では、そもそも米兵に危害が加えられること自体が大問題であり、沖縄人に偏見を持ち占領者意識丸出しの米人も多い。陪審評議の場でも、ただでさえ米人8人に沖縄人3人と不利なのに、被告人無罪を主張するのは伊礼ただひとり。絶望的に孤独な状況の中で、果たして陪審評議を無罪に持ち込むことができるのか。強固な「クルーアクション」論、「くるせー」の解釈、豊富な検察側証拠、ハング・ジューリー(評議行き詰まり)の危機など、9日間の裁判と3昼夜にわたる陪審評議の模様が、スリリングに描かれている。また、主人公の会社に対する米民政府からの理不尽な追徴金を始めとした、復帰前沖縄社会のアメリカ統治の一端を垣間見させるエピソードも多く大変興味深いものがある。
この作品を沖縄版「12人の怒れる男」というのは言い過ぎか。まあ個人的には、ほんとに筆者自身がこんなに冷静沈着に他の陪審員を上手に説得できたのかどうかは失礼ながら少し疑問なんですがw
しかしここ(http://www.jdla.jp/houmin/2007_07/07.html)を読むと、筆者はかなり異色の人物であることがわかる。そうとう有能な人物なのだろう。
それはともかく、戦前日本でも実施されその後は行われていない陪審制度の様子が詳細に描かれ、現在導入が進められている裁判員制度を考える上でも参考になる。沖縄人としては、既に古典的ともいえるこの作品を今まで知らなかったことが残念。
『南京の真実 七人の「死刑囚」』を見てしまった [映画・DVD系]
入場無料の上映会なのでタダで見られたわけだが、しかし3時間もの苦痛な時間を浪費させられたことはお金以上に大きな損失だった気がする。
内容は、東京裁判でいわゆる「A級戦犯」として処刑された七人の死刑囚たちの最後の一日をめぐるドキュメントの形式をとり、彼ら(正確には松井石根)の回想から「南京大虐殺など無かった」とほのめかすストーリー展開となっている。そもそもタイトルが「南京」なのになんで東京裁判??と誰もが思う不可解さを、回想シーンで当時の日本のプロパガンダ記録映像をはさむことによって強引に結びつけて解決する。これだけでもアクロバティックなのに、作品が主張する政治的メッセージもアクロバティックさが炸裂。だって占領当時の南京を写した日本の記録映画の映像を見せることだけで「南京大虐殺など無かった」と結論づけようとしているのだから、開いた口がふさがらない。中国のプロパガンダに対抗するのに、そんな戦時中の日本のプロパガンダ映像を持ち出して、どのような説得力があるというんだろう。当時の南京でどのようなことがあったかは知らないが、日本にとって都合の悪い場面など出てくるわけないじゃないかw
キャストの点からいえば、特に藤巻潤の東条英機はいただけなかった。頭の形も違うしw、あまりに健康的すぎて(ガタイ良すぎて)違和感バリバリ。広田弘毅を演じた寺田農は、魚雷にくくり付けたドラム缶の中でバカヤローと叫んだあの頃を思い出して欲しいw
まあこの映画は一般公開される意味が感じられない出来の悪いプロパガンダ作品としての評価以上のものは何もないと思う。見どころとしては、挿入される記録映画『南京』(昭和13年)に出てくる装甲車ぐらいのものだろう。中国側の主張する「大虐殺」が誇張されているのは事実かもしれないけれど、逆に当時の記録映像を何の疑いの目もなくたやすく信じて「虐殺など無かった」証拠だと言える人たちがステキだ。ヒデキ、感激!である。この作品からは本当に「真実」に迫ろうという気概は感じられない。
『任侠外伝 玄海灘』(1976) [映画・DVD系]
ATG作品、未DVD化。唐十郎監督。
特殊漫画家・根本敬のモチーフというか座右の銘というか、「小僧、糸のないギターを弾いてくれ」のセリフの元ネタはこの映画。
道端で倒れ込み、蛇口から吹き出る水を飲む若い男(根津甚八)がいた。売血してふらふらの彼を拾ったのは一匹狼のヤクザ、近藤(安藤昇)で、男は彼の舎弟分となる。
朝鮮戦争のさなか、死体洗いのバイトをしていた医学生の沢木(宍戸錠)と近藤は、同じ仕事がもっと儲かると誘われ、韓国に渡る。死んだ兵の認識票を配るため釜山のある農家にやってきた二人は、止めに入った韓国人の男(小松方正)も足蹴にして、女に暴行してしまう。
その後、沢木は沢木組の親分、近藤は沢木と兄弟分ながら一匹狼のヤクザとなり、韓国から女たちを密入国させて売り飛ばす商売に手を染めていた。その女たちにまぎれこんだ、一人の美しい女と、近藤、若い男の三人の関係はいかに。そして、近藤と沢木の関係はいかに。
俳優陣の演技が光る。根津甚八は、便所の床にはいつくばって流れる小便を飲んだり、ヘドロだらけのドブ川に顔をうづめたりなど体を張った演技で惹きつける。そして、小松方正の怪演が素晴らしい。七色の苦悶の表情を浮かべる・砂を噛みしめる・半ケツを出すw
国鉄の局長役の常田富士男のナヨナヨした感じ、刑務所の刑務官役の丹古母鬼馬二もイイ。
主題曲の「サーランヘー、トーンマッコーリー」(うろ覚えです)というメロディーが切ないが、耳に残る。安藤昇の挿入歌「黒犬」はセリフに味があって、シブイ曲だ。ぜひ一聴をおすすめしたい。
『太平洋の地獄』(1968) [映画・DVD系]
『太平洋の地獄』を見た。
洋上の孤島に、一人の日本兵(三船敏郎)と一人の米兵が流れ着く。わずかな砂浜とジャングルしかない島。先に住み着いていた日本兵は、後から来てジャングルに逃げ込んだ米兵をあぶりだそうと頑張る。米兵の方は、日本兵の隙をついて水をかっぱらおうと頑張る。双方、ろくな持ち物や装備もない中で、頭を使って生き延びようと必死だ。そうこうしているうちに、しだいに両者の間に「共同関係」のようなものができあがっていく・・・。
前半の両者の「攻防」が面白い。特に日本兵を演じる三船敏郎が「またんかー、こら!」「だまれー、だまらんかー!」と迫力満点w。言葉こそお互いわからないものの、顔と態度で通じさせたり、立場が逆転したり、笑えるシーンもあちこちある。しかし、おそらく戦争のむなしさや不条理を表したかったのではないかと思われるが、ラストシーンのあっけなさには少々拍子抜けした。DVDには特典として「もう一つのあり得たシーン」が追加されていたが、こちらだと意外性がなくなってしまう気がする。
登場人物は日米双方の「白ひげ」と「黒ひげ」のみ(もちろん「赤ひげ」ではない)。他には人間も戦車も飛行機も軍艦も出てこない。二人のひげオヤジの熱く冷たい共生を見るための映画だ。
お詫び [アヤシイ系]
以前、橋下弁護士について、ある巨大掲示板の書き込みを引用する形で某所に以下のようなコメントを付けました。
(引用開始)
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刑事弁護に精通しておられる橋下氏の華麗な経歴は以下の通りのようです。
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79 :傍聴席@名無しさんでいっぱい:2007/09/13(木) 01:20:04 ID:zehWQXUm0
>>42
光市の弁護団の主な有名担当事件(総合)
→新宿西口バス放火事件、山梨幼児誘拐殺人事件、和歌山カレー事件 、ヒューザー、オウム真理教、ハンセン病訴訟の弁護団代表
広島市小1女児殺害事件の外国人ヤギ、名張毒ぶどう酒事件弁護団団長 、藤本事件、下関駅無差別殺傷事件、中国残留孤児広島訴訟
橋下の過去の主な有名担当事件(総合)
→(今回の)橋下事件
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(引用終了)
ところが橋下氏の業績について、
事実誤認もしくは不当に低く評価がなされているのではないかとの指摘を受けました。
報道によりますと、橋下氏は、グレーゾーン金利で取り立てを行っていた商工ローンの顧問弁護士を8年間勤め、「8年間負け知らず」だったと自ら豪語していたこともあり、この報道が事実なら、商工ローンの権利擁護に多大な貢献実績を残されていたことが確実となり、橋下氏の過去の業績について、当方のコメントにも認識不足・事実を誤認していた点があったと考えざるをえません。
よって、ここに、橋下氏とともに、橋下氏に利益を守られたグレーゾーン業者、「核保有発言」等により府知事選での橋下氏を支援する珍風等関係各位の皆様に、氏の弁護士としての実績を不当に低く表現してしまった件について訂正し、謹んでお詫びいたします。
積ん読その13 『おい、小池! 全国指名手配犯リスト付き未解決事件ファイル』 [読書不可侵条約系]
これはもうタイトルそのものにヤラレました。あちこちに貼られている指名手配ポスターで有名な「おい、小池!」ですよ。かなりインパクトあります。しかし本の内容は、あの指名手配された小池さんについての詳細なルポルタージュかと思いきや、サブタイトルにあるように近年の様々な未解決事件とその指名手配犯を紹介するもの。小池さんも、あくまでその中の一事例に過ぎません。なのにタイトルに使うのは反則じゃないだろうかw
読んでみると、未解決の事件ってけっこうありますね。「おい、小池!」さんのようにすでに容疑者が特定された事件はともかく、いまだ容疑者が特定されないままだいぶ時間が経つ事件などは今後の捜査がうまく進むのかどうか、気になるところだ。
『ウィッカーマン』(1973) [映画・DVD系]
『ウィッカーマン』を見た。昔、レンタルビデオ屋で後輩に紹介された時、ジャケットに現れた髪を振り乱して手を突き出している妙な男と、巨大なロボット風のなにものかが強烈な印象を与えてくれた作品。その後、どこのレンタル屋を探しても見つからず、DVD化もされていなかったが、どうやら数年前に一度DVD化されたことを知り、なんとか購入することができた(しかしその前に通信販売で間違って英語版を買うという大失敗もあったが)。
サマーアイル島で少女が行方不明になったとの連絡があり、主人公ハウイー警部は単身、捜索に赴く。島では、島人たちの様子が何か変だ。よそ者を避けるような態度のみならず、妙に不思議でエロティックな風習に覆われている。厳格なクリスチャンである警部にとっては大変不快な風習だ。さらに、少女の捜索でも、島民がその行方を隠したがっている様子があり、警部はなんとか少女を探そうと躍起になる。島のリーダーであるサマーアイル卿も不思議な人物で、少女のことや島の風習の独自性について、警部に説明してくれるのだが、アヤシゲな雰囲気を醸し出している。島の祭りまで滞在することになった警部は、少女が祭りのいけにえに捧げられるのでは?と推測し、祭りに紛れ込んでいくのだが・・・
島で行われるケルトふうの風習がとても味わいがあって面白い。映画ではそれが逆に不気味さへともつながっていくのだが。そして、どんでん返しのラストも、なんだかよくわからんけど意外に面白かったwというか、警部がかわいそうじゃないかww
ただ、公開された通常版ではもともとの原版からけっこう重要なシーンが総計10分以上削除されており、そのために、全体として理解しづらくなっているのが残念(完全版DVDでは通常版のほか、削除シーンを含む復元版が両方入っている)。最近、ニコラスケイジ主演でリメイク版がつくられているが、こちらは未見。




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